城2
~まぼろしの城に描かれていた龍~
Words & calligraphy
書家・出口胡蝶の、書とことば。
~まぼろしの城に描かれていた龍~
~土から生まれた要塞~
「城」の漢字成り立ちは、「土」と「成」で構成され、中国では、土の煉瓦で万里の長城を築いていた事を思うと土から成るという意味が、とても分かりやすいですね。
今回の銀座クラシック展の倣書部門の私の出品作品は「城」です。
1年ほど前に書きたい1字を選び、御岳山での5日間の合宿で厳しい指導を受け練習に励み、そのあとも半年以上かけ研鑽し、2度の審査を通過し、出品資格を得られるため、1年の中で一番時間を注いだ作品を披露する場となり、お客様の反響がとても気になるところです。
今回なぜ「城」という文字を選んだかというと、作品として見栄えが良く、堂々とした「城」を書くというイメージができたのと、三角形の安定感のある外形で「成」の終盤の長い線の見せ場があり、起承転結が表現できるという点で選びました。
私は、北海道十勝というまだ開拓されて150年ほどの土地に育ったこともあり、お城には縁が無く、かなり曖昧な知識しか無かったのですが、「城」を書き始めてこの一年で興味を持つようになり、先日、弾丸旅で白鷺城に行き、城を新たな目で拝観して来ました。

屋根の瓦の色も灰色が混ざった白で、姫路城別名白鷺城の字の如く大空に飛び立つ白鷺をイメージする事ができ、とても魅了されました。
因みに、家康が作った江戸城は、代が変わる度に修復されて来たそうですが初代の城の屋根の色は、白かったそうです。
日本橋からの眺望では、富士山の頂きが見えることから、幼い頃から見ていた富士の山と重ね合わせ、屋根を白にしたと言われています。
日本の「城」の多くは、他の国の城とは違い「富士山」を無意識のうちにイメージし、土から成る「城」を「山」に見立てて築いたのかなとも思えて来ますね。
それぞれの城は、建てた武将の人間性が剥き出された要塞という意味で、個性が様々で知れば知るほど面白いと思えるようになりました。
8年前に胡蝶の雅号を頂いた時に、先生から信長の陣羽織には蝶の家紋が入っていると聞いたのを思い出し、どんな蝶の文様かあらためて調べてみました。

すると、コウモリのような強くて恐れを感じさせる蝶でした。
信長が可憐な蝶をまとっていては意味が無いので当然ではありますね。
「織田信長」は、イエズス会の宣教師から譲り受けたマントを好んで着用していたこともあり、陣羽織もマントをイメージしてデザインし黒い羽がふさふさと埋め込まれたマントに、織田家の家紋「揚羽蝶」を背面に入れたのも、西洋の影響を受けていたことを物語っているように感じます。
丈は長く、動きやすいようにと「折ひだ」が入っており、日本刀の抜き差しがしやすい作りになっています。
武将の陣羽織は甲冑を雨や風雨から守る機能を持つと共に、自らの財力やカリスマ性をアピールしていました。
色や柄も敵か味方かを見分けるためにも重要な意味を持ちました。
ただ、アピールする事が逆効果となり、遠くからでも命を狙われることにも繋がるのも否めなく、徳川家康の逸話によると三方ヶ原の戦い(現在の静岡県浜松市)で武田信玄軍の攻撃に合い 人生最大の接待絶命の窮地に追い込まれましたが、家臣が、家康を守るために甲冑を交換し、主君を逃がし、身代わりになり討死しそのおかげで家康は何とか浜松城に帰還することが出来たとされています。
家康の人徳があっての家臣の行動は、信長の本能寺の変で家臣の明智光秀に襲撃された事を対比させると、皮肉にも感じてしまいます。