Exhibition 展覧会の記録
会期終了個展
出口胡蝶 書作品展 夢
過去から未来への「夢」のかけらたち。
2026年7月3日(金)〜 7月8日(水)
ギャラリー五峯(ごほう)
Memories of the exhibition
ご来場ありがとうございました
From the artist
出口胡蝶より
過去から未来への「夢」の”かけら”たち。書を通じて広がりゆく日々は、故郷をあとにしてきた頃からの夢でした。筆を執ることで新たな覚醒の景色が生まれ、作品に大きな変化が映り込んできます。奏で合う音色のように、線が織りなすアルテミス空間を、多くの皆様にご覧いただきました。
Selected works · 2026
展示作品を、もう一度。
会場に並んだ作品の一部を、短い解説とともにご紹介します。書体、道具、装丁まで、一点ごとに異なる表情をお楽しみください。
9作品の記録個展「夢」の展示作品
戯
赤で描いた隈取(くまどり)の顔の上に、行書体で「戯(たわむれ)」の文字を重ねた額装作品です。昨年、映画『国宝』を拝観してから、ちょうど1年間じっくりとアイデアを温めていました。
歌舞伎の世界を漢字一文字で表すには何が相応しいか、何パターンもの漢字を書いて試行錯誤しました。その結果、この「戯」の書体が持つ四方に伸びる線の構造が、隈取とのバランスが一番良いという結論に達しました。歌舞伎のイメージも損なわれず、粋な作品になったと思います。
01 / 09
01戯
個展「夢」の展示作品
戯
赤で描いた隈取(くまどり)の顔の上に、行書体で「戯(たわむれ)」の文字を重ねた額装作品です。昨年、映画『国宝』を拝観してから、ちょうど1年間じっくりとアイデアを温めていました。
歌舞伎の世界を漢字一文字で表すには何が相応しいか、何パターンもの漢字を書いて試行錯誤しました。その結果、この「戯」の書体が持つ四方に伸びる線の構造が、隈取とのバランスが一番良いという結論に達しました。歌舞伎のイメージも損なわれず、粋な作品になったと思います。
02鶴
個展「夢」の展示作品
鶴
「鶴」は、品格ある姿と高らかな声を持ち、長寿で、夫婦のつがいが仲睦まじく一生添い遂げることから、とても縁起の良い象徴とされています。
漢字を見ても、「隹(ふるとり)」と「鳥」でできており、偏と旁の両方に鳥の意味を持つ文字です。人間から見ても、すべてにおいて憧れの要素が多い鳥だと感じます。季節で言うと冬のイメージが強い鶴ですが、今回の作品では、春から夏の深い山奥で生き生きと鶴が生息している様子をイメージし、「松樹林」の布を装丁に選びました。
03洗心和陽
個展「夢」の展示作品
洗心和陽
後漢時代の石碑の文字で、隷書の典型とされる「曹全碑」から4文字を応用した作品です。「扁平・水平・等分割」という隷書の特徴を持ち、波磔(はたく)の伸びやかさが美しい書体で、「清らかな心で、明るく穏やかである」という意味を表しています。
装丁は「軸」仕立てです。この軸の布は、知り合いのNさんから「着なくなった着物を作品の装丁にどうぞ」とお譲りいただき、それを裂いて使用しました。友禅染の花柄が清々しい水色に映え、洗心和陽の文字とも調和してとても上品な作品になりました。Nさんがこれをご覧になってどのような反応をされるか、今からとても楽しみです。
04山
個展「夢」の展示作品
山
筆の代わりにローラーに墨を付け、金文の「山」を書いた、ローラーアート手法による額装作品です。
山と水の関係をイメージしながら、墨の面と余白の対比によって、自然界の気配を表現しました。
05渚
個展「夢」の展示作品
渚
遣唐使として唐に渡った空海が、現地で目にした「西洋の筆(刷毛で書く技術)」を日本に持ち帰ってきたとされる、空海伝来の技術である「飛白体(ひはくたい)」を用いた額装作品です。
波打ち際の光景をイメージし、ゆらゆらとした飛白の線で、かすれを持たせながら表現しました。
06遥
個展「夢」の展示作品
遥
羊毛の中でも毛先が細く高級とされる「細微光鋒(さいびこうほう)」の筆で書いた作品です。
羊毛は繊細で柔らかいため、含んだ墨がゆっくりと降りていきます。それによって生まれる独特の墨溜まりやかすれ、そして紙の上に筆が留まる「時間の経過」そのものが深い味わいとなっています。「遥」という言葉が持つ、ゆるやかでたおやかな空気から、遠くまで続く「道」などをイメージしていただけるかなと思います。
07樹
個展「夢」の展示作品
樹
豊かな墨量をたっぷりと筆に含ませ、墨の濃淡やにじみを生かして書き上げた作品です。
筆が通った跡(筆路)がはっきりと分かることや、墨量が非常に多いため乾くまで半日近くかかることが特徴です。しかし、それによって「マチエール(意図しない紙の収縮で偶然にできる模様)」に景色が写り込んだように見えたり、輪郭の外までのびるにじみの線が立体感を生み出したりします。まるで生命体がうごめくような「シャーマニズム空間」をそこに作り出しています。
08陽
個展「夢」の展示作品
陽
794年に築かれた平安京、平安宮内裏の東正門「宣陽門」の扁額に空海が記した一字「陽」をもとに書いた軸装作品です。
それぞれの線を接近させ、白が見えたり隠れたりする、極限まで黒みの多い画面をつくることで、黒の中の白がオーラのように光を放ちます。重要な門として、悪霊が入らないように、出来るだけ隙間の無いデザインにしたのではないかと考えられます。装丁の布にはハワイの生地を選び、サンライズ(朝の陽の光)の輝きをイメージしました。空海が筆をとった原典の拓本は、下の参考画像からご覧いただけます。
09花鳥風月
個展「夢」の展示作品
花鳥風月
自然の風情ある四季を表し、日本の美意識を象徴する四字熟語「花鳥風月」を、和様書体(平安時代の藤原行成などの能書家が書いた書風)で書きました。
平安貴族の間では、硯(すずり)の水面に月を映し出し愛でながら和歌を詠み、宴を楽しんでいました。今でも硯の窪んでいる部分を「墨池」ということから、硯の中の世界をジオラマの「池」に見立てたに違いありません。
会期中に紹介した作品と、そのときの言葉を掲載しています。
Visit the special exhibition
「夢」の世界を、
もう少し奥へ。
制作の背景をたどる読み物や、ミニアート、会場で紹介したグッズや実演の記録も。
特設サイトならではの空間で、続きをお楽しみください。
筆耕ドットコム内の特設サイトへ移動します
Exhibition information
開催の記録
2026年7月に開催した個展の情報です。
- 会期
- 2026年7月3日(金)〜 7月8日(水)
- 時間
- 12:00〜18:00(最終日16:00まで)
- 在廊
- 作家は全日程在廊いたしました
- 会場
- ギャラリー五峯(ごほう)
東京都杉並区下井草2丁目40-16 2F - アクセス
- 西武新宿線「下井草駅」南口 徒歩1分
- 入場料
- 入場無料
For collectors
展示作品のお迎えについて
個展「夢」で展示した作品は、会期後もお求めいただけます。心に残る一作がございましたら、暮らしの中で長く寄り添う書として、どうぞお問い合わせください。