Words & calligraphy

漢字エッセイ

書家・出口胡蝶の、書とことば。

202112月4編のエッセイ

金剛

文 出口胡蝶

先日、今年の世相を表す漢字は、「金」と清水寺で発表になりました。
お正月も間近に迫り、お寺や神社へお参りに行かれる方も多いと思うので、それに因み、掘り下げてみました。
まず、金剛力士像の「金剛」は仏教用語で 最も硬いものという意味で、金よりも硬いダイヤモンドを金剛石と言ったりもします。
金剛力士(仁王様)は、全国各地のお寺に沢山見かけますが、中でも東大寺の南大門に立つ仁王像、運慶・快慶作が有名です。
なぜ迫力のあるお顔と筋肉隆々の体つきの2体が門の両脇で出迎えてくれているかというと、金剛力士は元々は1体でしたが分身の術で2体に分かれたから、そっくりなのだとか。
そして両者の口の形はそれぞれ「阿」と「吽」の形になっており、阿吽の呼吸で、人々を警護してくれる健康の神=ガードマンとして存在しているのです。
実際の相撲でも立ち合いで息を合わせる事を「阿吽の呼吸」と言い、まさに金剛力士と重なりますね。
ちなみに「阿」は物事の出発点、言葉(音)の始まりを表わし、「吽」は物事の終着点で、言葉 (音)の終わりを表わしている事から、前回の「一」と「円相」と同じ意味を持っているということに偶然気がつきました。

円相

文 出口胡蝶

禅宗では、「円相」は悟りの形とされており、禅僧が書いた円相が主に書として沢山あります。
円窓とも言い、己の心を見つめる窓という意味で座禅をしながら、床の間に円相を掛けることが多くあるようです。
円相は、終わりの無く延々と続く宇宙を表していたり、始まりと終わり、また、地球そのものの形でもあり、円満で縁起が良い意味など、様々ですが、円を見ていると幸福感を抱き暖かい気持ちになるのは、人類共通かも知れません。

宇宙旅行

文 出口胡蝶

先日、いよいよ実業家の前澤氏が乗った宇宙船が打ち上げられ、宇宙へ旅立ちました。
人類の長年の夢を背負った旅立ちと、報道されているのを聞き、アボリジニの天文説を思い出しました。

「アボリジニ」は、オーストラリアの先住民で、アボリジニのポップで自由な絵は、大地のエネルギーが溢れています。
特徴としては、点描で細密に書き込まれカラフルで大胆な構図がとても魅力的で、私もアボリジニアート展を5年前くらいに観に行き、虜になりました。
でも、もともと古代では、飾るためにアートとして描かれたのではなく、乾いた荒野の中、狩りで移動する際の道標となった水場や、岩場に絵を描き、何万年もかけて沢山の旅人(狩人)が描き足して行き、部族の縄張りを主張する為だったことや、獲物の情報などを仲間に伝えたいという側面があって描いたものだとされています。

描かれているモチーフも、アボリジニの暮らしに身近に居た動物や、魚、風景などが主ですが、太陽を描く時に黒点も描かれていることも証拠の一つとなり、今までのメソポタミアや、エジプトの天文学より10倍も古くからアボリジニ天文学は、存在していた事が近年になって分かってきたそうです。
他にも明るい星を地図に見立て方角を計ったり、エミューという鳥の一生を星座に映し出し、その変化からカレンダー代わりにして、家族皆で夜空を見上げて、何世代も親から子へ神話として語り継がれていました。
古代の人々の天体の観察力というか、視力、聴力、運動能力は今の何倍も、研ぎ澄まされたいたに違いなく、その優れた五感を持った人々が描いたものは、アートを超えた価値があるように思います。
現代の宇宙科学の進化も素晴らしいですが、神話の世界からは遠く離れて行くばかりで古代の天文説が愛おしいく感じてしまいます。

虎

文 出口胡蝶

「虎」の起源
先週の「龍」に続いて来年の干支「虎」の起源について調べてみました。
「龍と虎」をモチーフにした龍虎図など、日本では室町時代から戦国武将や、僧侶の間で人気が高く、「雲をよぶ龍」と、「風を起こす虎」を対峙(たいじ)させ絶対的な王者同志が争うこと、の例えとして知られています。
元々、虎は中国や韓国では、古代では守護神として信仰され、仏教美術では山神(精霊)として、そして絵画では、君主として描かれ、韓国の民画では、咆哮している恐い虎というよりは人間的な表情でユーモラスに描かれていることが多いのだそうです。
日本では龍はもちろん、虎も生息していないため、想像でさらに飛躍させた日本独自の愛嬌のある丸顔の虎が多く見られます。
また、虎は黄金の毛色を持つことや、一日に千里も離れた場所へ行っても、その日のうちにちゃんと元の場所へ戻って来ることや、子供を可愛がって大事に育てることからも、お金がすぐ戻る、家宝を大事にする、という縁起の良い動物と言われています。

作品「虎」

私の新作「金の虎」作品です。玄関などに飾ると運が上がりそうです!