胡蝶の花押
~自分だけの漢字+平仮名のハイブリッド~
Words & calligraphy
書家・出口胡蝶の、書とことば。
~自分だけの漢字+平仮名のハイブリッド~
~ 義経にも受け継がれている王義之の系譜 ~
~ 花押から見える源氏パワー ~
前回は、源頼朝の花押を取り上げ、花押に秘められた一面を覗く事ができ、ご好評いただきましたので、もっと花押の世界に視野を広げて行きたいと思います。
今回は頼朝の弟、義経の花押に注目してみました。
義経は、頼朝の異母兄弟で、母、静御前、幼名「牛若丸」までは私も子供の頃に読んだ本で覚えていますが、様々な伝説が各地で残されている戦術に長けた凄いヒーローとして今でも人気が高い武将です。
因みに、義経が亡くなった日は、1189年6月15日ということで、偶然にも明後日だということと、空海の誕生日が6月15日で、2つの一致点に気がつき驚きました。
さらに何の因縁も無いとは思いますが 私の恩人も同じ6月15日です…(笑)
↓壇ノ浦の戦いの前年、二十六歳で書かれた数少ない若き義経の花押です。

源+「經」
左に大きく膨らんだ弧のように書かれ、旁の方は横画を繋げて立て、波のようなデザインです。

※義経の「つね」→「經」は縦糸の意味です。
頼朝の花押よりも、早く書けるということを重視しているようにも思いましたが義経の戦略家としての頭の回転の良さと、勢いのあるパワーを感じました。
つづく
「花押」=(かおう)という言葉はご存じでしょうか?
私は、普段から沢山のお名前を書くのが仕事ですが、整った楷書体以外は、筆耕では殆ど書く事はありませんし、絶対的に読めて、等間隔で全ての人にとって美しいと感じてもらえ
中庸で安心感のある美が筆耕での極意です。
でも、その真逆の美が「花押」のように思います。
その理由は、全く読めないサイン(署名)という事と、主に書体の中でも読むのが難しい草書体を使って名前の漢字2文字などを重ねて2文字を1文字のように見せるなどされた、世の中にたった一つのハイブリットデザインだということです。
※草書体は、中国でも隷書を崩して簡略化された画数が少なく連綿で書くことに適した書体です。
日本では「ひらがな」のもとが草書です。草書をもっと簡略化する事で、誰もが早く書けるようになりました。
源頼朝の花押で分かりやすくしてみましょう。

頼朝の名前の部分「束」と「月」を合体させて創られています。
まずは字典の「束」と「月」の草書に近い字を書き出してみました。


臨書してみましたが結局筆路が分からず、墨の掠れ具合で判断しました。
単純に2字が合体されているのではなく、かなりデフォルメされてデザイン化されているのが分かりました。

想像ですが「~月をも束ねる~」という意味で解釈すると、平家を滅ぼし、初代征夷大将軍となった頼朝の精神性がこの花押に込められているのかな?と考えると、「サイン」という表現は相応しくないと感じました。日本人の漢字に情緒を込める気質が独自の漢字文化を作り、その中で花押が誕生したのは納得です。
つづく