Words & calligraphy

漢字エッセイ

書家・出口胡蝶の、書とことば。

20227月3編のエッセイ

安倍元総理の花押

~安倍元首相の花押を読み解く~

文 出口胡蝶

安倍元総理の街頭演説での襲撃事件から10日が経ち、今でも事実だとは思えなく、いまだ安倍元総理の、はつらつとした声が聞こえて来そうです。
ご冥福をお祈りいたします。

安倍元総理の花押はどんな花押だったのだろうとふと思い、調べてみました。

安倍元総理の花押

推測ですが、(晋)の上部と、(三)を重ね合わせた形のようです。
(晋)の漢字の由来は(進)と同じで、縦の2本は矢を意味し、狙いを定めてどんどん進む、という意味です。
(三)は、3世代の意味がある事を考えると、政治家のトップの家柄に生まれた事にも結び付けられます。
祖父 岸信介(内閣総理大臣)、父、安倍晋太郎(外務大臣)

実際、どのような意味が込められ花押を作られたかは、分かりませんが、頻繁に、この花押を書いていたのだな、と思うと感慨深い思いが致します。

信長の花押

文 出口胡蝶

安土桃山後期から、室町時代の武将で、日本で最も人気の高い歴史上の人物で知られています。そして、花押も同様に最も人気があるようです。

織田信長の花押は、人生で沢山の花押を使用したそうですが、先週ご紹介した「麒麟」の麟をモチーフにして作られています。

胡蝶書 信長30歳の時の花押
(胡蝶書 信長30歳の時の花押)

私が書いた信長の花押を見てもらうと、花押として有名なので見た事がある人は多いかも知れません。
ただ「麟」の漢字をどうやったらこの形になるのかは私の知識では、残念ながら説明できませんが...。
漢字そのものより、動物の形として見た方が納得出来、格好いい、というより愛嬌が感じられます。
あとは、デザインとして2等辺三角形を横に倒したような安定した外形なので、手紙の最後にあると、安定して見えるという事もあると思います。

そして、なぜ「麒麟」がモチーフなのか?

麒麟は、泰平の世の前兆に現れる、想像上の生き物で殺戮を嫌い、命を大事にする動物です。
信長の「天下布武」の言葉の意味は、武力によって世の中を統一するという意味ではなく、「徳」を持って平和な世の中を創るという意味だったことが近年分かったそうです。
傍若無人で、ワンマンな性格もあったようですが、楽市楽座を設け、自由に商いができ、関所を廃止してどこでも行き来できるようにしたりなど、並外れた発想力で経済を豊かにし、楽市楽座の名前の如く、楽しい世の中にしたと考えていたのかなと思うと麒麟のように思えなくも無い、と思いました。

麒麟

文 出口胡蝶

麒麟 イメージ画像

麒麟(きりん)は日本ではキリンビールのロゴマークとして誰もが知っている霊獣の一つですが、中国で古くからの伝説としてどのような象徴かご存じでしょうか?

泰平の世(幸福で安定した世の中)の前触れに現れる伝説の動物と言われています。

中国では、龍、鳳凰、と比され、麒麟は麒が雄で麟が雌と言われており、容姿は鹿で、顔は龍、背丈は5メートル、牛の尾と馬の蹄(ひづめ)をもち、背毛は五色に彩られ、毛は黄色く、身体には蛇の鱗があり、様々な動物が集合した最強の動物ですが、性格は、とても穏やかで足元にいる虫や、植物さえ踏むことを恐れるほど殺生を嫌う優しい動物とのことです。

今まで漠然と、強くて龍のような勇ましいイメージがありましたが、泰平の世の前に現れる優しい動物だという事を知り、麒麟の存在が、癒しキャラのように思え、地球上のどこかで現れてくれることはもちろん、自分自身が、小さな世界で麒麟のようになれたらいいな~と思いました。

つづく