Words & calligraphy

漢字エッセイ

書家・出口胡蝶の、書とことば。

20228月2編のエッセイ

北条家花押

~北条一族の花押から見えて来る野望とは~

文 出口胡蝶

今回は、今大河ドラマ「鎌倉殿の13人」の主人公北条義時の花押を探るため、北条一族の花押を資料から、全て模写してみました。
幾つか分かってきたことは、花押の資料に掲載されている中で、断トツで数が多く、さらに他の時代全ての花押を見ても最多数であることに気がつきました。
花押が流行した時代=北条の繁栄した時期だったと言える?のが窺えます。

北条一族花押
〈※「書の日本史」掲載 ⇒鎌倉時代の200個のうち約60個が北条一族の花押)

源頼朝から受け継ぎ、政権を支配していた北条義時の花押を取り上げて見てみると、他の沢山の花押に比べ、縦長の形状で横(斜め)に動く線は短く、吐出した見せ場のような線は天辺に少し突き出した部分だけです。

北条義時の花押
〈北条義時の花押)

頼朝の花押と書いて比較してみると、頼朝の花押を基にし、義時の方が地味で、動きが少ないので書きやすいと感じました。

~義時の人物像~
義時は、頼朝の側近として最大の信頼を得ていましたが、頼朝の死後、嫡男の頼家が2代目征夷大将軍になり、まだ若かったため側近として政治を支えるために有能な武士団(チーム鎌倉)を固め義時が指揮官となり権力を持ちました。
姉の雅子ともタッグを組み、いつ自分たちが滅ぼされてもおかしく無い危うい時代のリーダーとしてどんどん残虐な選択をせざるを得ない状況に追い込まれていったのだと思います。

花押から見ても、リーダーでありながらも金銀財宝を収集したり、オリジナリティー性を主張するようなオーラのある人物ではないように思います。
逆に、地味だからこそ、人の心を見抜き人を動かす能力に長け、戦略の上での強みになっていたと言われています。
今の世の中でも、そういう社長の方が、現実的に人がついて行くのだなということを感じ、勉強になりました。

続く 

創造

文 出口胡蝶

先月、五峯ギャラリーで開催した展覧会に出品した中の一つ「創造」を昨日ご購入者のご自宅へ納品し、無事に嫁がせて頂きました。

ご購入いただいた決め手は「創造」という言葉が大好きな事と、ポップでカラフルな色調の額と文字の雰囲気が合っていて惹かれたとのこと。ご本人も、インテリアコーディネーターや工芸、書をやっている方なのでぴったりだったようです。

胡蝶オリジナル作品「創造」 画像

今回の作品の元になったのは、中国の漢時代以降の宮殿、陵墓、城壁などの部屋の壁、柱や門、床などに敷き詰めらえた塼(せん)=(煉瓦タイル)また画像石題記の拓本資料の中から文字を選び取り、紙は画用紙、筆記具はパレットナイフで描き、部分的にマスキングテープなどで装飾し、現代的な文字アート作品に仕上げました。

画像石題記
画像石門[君」

ちなみに画像石題と言うと、現代でいうモニター画面上に映る画像のことを思い浮かべてしまいますが、画像とは、動物や、文様などの肖像画を石に刻んだもののことです。

この塼や、石題の書体のベースは、篆書や隷書で、そこに鳥蟲篆などが装飾的に加味され、どれも古さが感じられなく、現代人にも通じる新しさすら感じます。
その理由は書の基本フォルムが根底にありながら、一字一字に多少の創作がされ、人の手による温かさと、石に刻まれた強い線が緊張感を生み、だたのレタリングだけではない永遠の美が宿っているからだと思います。

先週亡くなられた、ファッションデザイナーの三宅一生氏は、7歳のときに広島に投下された原爆で親を亡くし、自分一人が生き延びたというトラウマを逆境に、「破壊ではなく創造できるもの、美と喜びをもたらすものを考案するのが好きだ」と語り「再創造」という言葉をモットーとしていたそうです。

アバンギャルドでありながら、用の美が一体になったファッションが世界中の人に愛され、奇抜さだけでは飽きられてしまう、という事を教えられたような気がします。