Words & calligraphy

漢字エッセイ

書家・出口胡蝶の、書とことば。

20231月3編のエッセイ

松竹梅

文 出口胡蝶

~日本人共通の言の葉
古くはこうしてできました~

松竹梅の掛け軸 出口胡蝶作

先日の帯広で開催した個展で、掛軸をご購入頂いた十勝の広尾町の親戚の方から、ご自宅の床の間に飾った写真を送っていただきました。
やはり床の間に掛軸というのは、あらためて見てみるといいな~と感じました。
床の間という少し奥まった空間に掛軸が、生かされていて自分の子が良い場所に嫁いだ親の気持ちになりました。

ところで「松竹梅」がなぜ、吉祥語として象徴的に君臨しているのでしょう?
中国の「歳寒三友(さいかんさんゆう)という言葉がありますが、日本では江戸時代に「松竹梅」が吉祥語になったそうなので意外と最近ですね。
そして語呂も良く、字面(字体が絵になる形)も良いので全てに於いて吉祥語の代表と呼べるのも頷けます。

●「松」は、冬でも青いことから、不老長寿
●「竹」は青々と真っすぐに育つため、子孫繁栄
●「梅」はどの花よりも先駆けて寒い冬に咲く事から逆境に強い人生(縁起が良い花)
確かに、この寒い1月に花を咲かせるというのは、気高い強さを感じ、肖りたいという気持ちになりますね!

平安時代前期には 遣唐使によってもたらされた唐風文化が主流でそれも衰退し、和歌=恋文を詠む色好みの人だけのものとなってしまっていました。
しかしそれを危惧していた 紀貫之(百人一首の歌人の一人)が先陣となり和歌を復興させようとしました。和歌に人の心情と言葉の型を作り、誰もがその言葉の組み合わせて歌にすることで、共通の季節感と情景の認識が出来るようになり日本人の心が和歌によって繋がったのです。
日本人にとって 桜と共に春を祝う習慣も 古今和歌集以降からのことだそうです。

紀貫之が考案した表現の型の例
●春=梅にうぐいす、桜と霞
●秋=紅葉に錦、月と雁

春節

~万事如意~

文 出口胡蝶

日本では、お正月と言えば大晦日の除夜の鐘の音と共に年が明け、元旦から3日~4日間くらい、家族と家で過ごすのが一般的ですが、中国では、旧暦を基にした旧正月(春節)に祝う習わしです。
今年は今週22日~27日の7連休となり、コロナ前の本来の春節よりは、控えめだろうと思われますが、久々に中国の都会から田舎の家族に一年に一回、春節に帰省するという人も多く、今年は三年ぶりのお祭りムードの春節になりそうですね。
中国の地方への長距離移動の場合、1週間のうち半分くらいは移動時間になるケースも少なくないようですのでそれに比べたら、私の実家の帯広まで1時間20分程度は、近所に帰るようなものだな~と思いました。

春節と言えば、昨年のお正月5日に、中野ライオンズクラブの会長様より書き初めの講師ゲストとして、新年の賀詞交換会にお招き頂き、台湾のライオンズクラブの仲間に皆で、寄せ書きを書いて春節に間に合うように掛軸に仕立て、贈るという企画をいたしました。
その時に、台湾(中国)の方へのメッセージを伝えるためにどんな言葉が良いか探ってみたのでご紹介します。

(中国語)(日本語)
身体健康身体健全
全家平安家内安全
生意兴盛商売繁盛
万事如意心願成就 如意宝珠
想事成事心願成就
大吉大利上々吉

中国の四字熟語だけ見ていても、意味は伝わって来ますね。

万事如意

私の先日の帯広お正月個展の出品作「萬事如意」
明るい希望の春のイメージで、装丁いたしました。

微笑佛

~ほほえみぼとけ~

文 出口胡蝶

微笑佛

私の作品の一つに、微笑佛(びしょうぶつ、または、ほほえみぼとけ)という作品があります。
この作品を先日開催した帯広個展で展示しましたところ、他の行書などの流麗な作品の中に突然全く違う雰囲気の書体が現れ、ユニークな文字として際立ち、印象に残る作品になったようです。
お客様からは笑っているようにも見え、面白いというご意見も頂きました。

張遷碑篆額

この文字は、「張遷碑」という後漢時代の古隷(古い隷書)の文字が刻まれている石碑の上部にある題字部分です。
篆書体で刻まれており、始皇帝の縦長の篆書とは違い扁平で字間も詰まっていて、でも均一な間合いが一体感を生み個性的な味わいとなっていることから、興味を持ち創作してみたいと思い、この書体に合ったモチーフを考え、倣書いたしました。

これが2千年前の文字とは考えずに、初めて目にする方が多いかと思われますが、私が書いた作品から純真で素朴な美を感じ取ってもらえたことは、古代人の息吹を現代人へ 橋渡しができたような感覚になり、嬉しく思いました。

つづく