Words & calligraphy

漢字エッセイ

書家・出口胡蝶の、書とことば。

20216月12編のエッセイ

石

文 出口胡蝶

石は、山の崖の形と、口から出来ている文字です。
古い信仰で大きな石は神霊が宿るとされていたため、巨石の前で祭祀が行われ、その時の祝詞を入れる器が口の部分とされています。
イギリスにストーンヘンジというサークル型の古代遺跡がありますが、その巨大な石の柱は寸胴の形ではなく中間がやや太く作られています。
人の視覚的に、同じ太さで作るよりも真ん中が太い方が、よりどっしりと太く見える効果があり、ローマ神殿や法隆寺の柱も同じように作られているそうです。
全く同じ考えからかは分かりませんが、漢字の縦画も紡錘型に 真ん中よりやや下の辺りが一番太く膨らんでいて、最後だけすっと抜くというのが、安定感があり良い線と言えます。

鶴

文 出口胡蝶

鶴は、私の書の作品のモチーフで度々書いている漢字の一つです。
おめでたい意味があり、さらに生まれ故郷の北海道の道東地域に渡って来ていた鳥として、子供の頃から馴染みがありました。
結婚式などでも鶴亀は吉祥語として使われますが、鶴のつがいは、一生仲良く連れ添うそうで、双鶴という熟語もあります。
求愛のダンスをする行動は、写真などでも良く見ますが、最初だけではなくずっと寄り添うということを知り益々鶴が昔から尊ばれていたことが納得出来ました。

佛

文 出口胡蝶

佛の漢字の意味は、ほのか、かすか、という意味があります。
右側の旁は、何本かの木を縄で巻き付けようとするが曲がりくねった木を束ねることが出来ない様子を表しています。
そのことから、人の身体としての物体は無くなっても、魂としてかすかに漂っている、または、ふと心の中に現れたり消えたりして見えないけど、いつも居る感じ。という意味で佛という意味で佛という字になったのかな?と思いました。

観

文 出口胡蝶

元の字は、鸛(コウノトリ)の意味でした。
鸛は、鳥占いでよく使われ、神意を察すること、みる、みきわめる、ことから観るという意味で使われる漢字になりました。
特に、農耕について占うことが多かったそうです。
昨日、新聞で「東京にコウノトリが来る」という見出しを見つけ読んでみると、吉祥寺の公園に、1羽どこかの町から譲ってもらったとのことでした。
野生の鸛は50年くらい前に絶滅し、今は繁殖も難しいながらも大事に、人口的に繁殖をさせているようです

青

文 出口胡蝶

青は、もとの字は「靑」で”生+丹”です。
丹は、鉱物質を含む土石を掘り起こした井戸を表す字で、変色せず、器などに使う絵の具の材料となりました。
シルクロードの西域にあるサマルカンドの古都は、青いタイルで埋め尽くされた建築物で統一されていて、宝石箱のようでもあり、青に支配された空間は、美しいだけではなく海を知らないシルクロードの人たちにとっては、貴重な水をイメージしての青なのかも知れません。
サマルカンドブルーは中国の陶磁器の青と、ペルシャのブルーとが混ざりあって生れた青です。
サマルカンドの人は、家族の一人が亡くなったあと、喪服として青い服を着る習慣とか。
しかも1年間も着るというのですから驚きです。

魚

文 出口胡蝶

6月15日は弘法大師空海の誕生日でした。西暦774年に生まれているので、もし存命ならば1247歳ということになります。
幼いころの名前は真魚(まお)、号は遍照金剛(へんじょうこんごう)です。
魚という漢字は今では名前に使われることは殆ど無いですが、中国の紀元前昔から魚は、真っ暗な深海で生きる霊物として儀礼で霊廟にお供えされるほど崇められていました。
今の漢字は、点4つが下にあり、火を表していますが、もとは魚の尾の形です。

失

文 出口胡蝶

象形文字で、手を上げて舞い踊る人の形です。
巫女が踊っている姿ですが我を忘れて気を「うしなう」から出来ました。
「笑」も神を楽しませるために巫女が踊っている様子から出来た漢字です。
他にも「無」「舞」「楽」の字も、シャーマンが踊っている姿から出来た漢字で、どれも人の為ではなくて神様のための行いでした。
漢字も、もともとは甲骨文字と言って、神様に政治的な判断についてお伺いを立て、占ってもらうために用いていたものでした。
古い文字で左右が今と反対だったりする理由は、神に見せるためだったからというのが通説になっています。

続・失

文 出口胡蝶

中国ドラマ コウラン伝~始皇帝の母~が先日最終回となりました。
半年間、1話も欠かさずに観ていたので、大変な喪失感です。
ドラマが完結したので、その後の始皇帝がどうなったか調べていたら、病で59歳で巡幸中に死去し、その時に一緒にいた、胡亥という息子に他の王子を後継者にと書いてある遺言状を残したものの即破り捨て、自分が後継するという遺言状に書き変え、全ての兄弟と父始皇帝の若い沢山の妃も皆殺して皇帝の座に就いたそうです。
でも、5年で秦は滅亡しました。

自

文 出口胡蝶

漢字の成り立ちとしては、とても分かりやすく、今と全く同じ人間の行動から作られている漢字です。
自は、鼻の形で、自分の鼻を指して、ジェスチャーしたことから自分の「自」の意味になりました。
コロナ禍では、今まで続いて来た人間のコミュニケーションの手段が難しくなり、海外のスキンシップが多い国の人たちにとってはより、我慢の多い日常だろうと思います。
先週から少し暑く感じる日があり、日本では、流しそうめんは出来なくなるだろうなと、ふと考えてしまいました。

続・円

文 出口胡蝶

天=円で、四角=地という法則が中国で古くからあるということを、先日書きました。
そのことから通じるのですが、秦の始皇帝が貨幣を丸くすることを定めたそうです。
それまでは、貨幣の形は中国の中でも国ごとで長い形だったり様々な形でした。
円い形で中が四角く穴が空いているのは、日本の江戸時代にもそっくりな貨幣があり、始皇帝が考え出した形が後世にも息づいています。

道

文 出口胡蝶

しんにょうは、歩く、行くの意味があり、首は他族の首を手に持ちその呪力で呪いを祓い清めて進んだことから、「道」の字が生れました。
秦の始皇帝が中国国土を統一しやすくするために 度量衡、道幅や、文字などを統一しましました。
始皇帝専用の文字を篆書(小篆)体とし、臣下(君主に仕えるけらい)が隷書を使用することを定めました。
今では隷書体は、お札や〇〇新聞などの字として使われていて、名称として立派な印象を与える場合に使われていることが多いです。
筆跡鑑定としては、縦画を長く書く人は組織のトップに向いている人で、縦は短く横に延びた線で書く人は社長の下で能力を持っている立場の人という一つの見方があります。

聖徳太子

文 出口胡蝶

先日、聖徳太子のことを取り上げた番組内で、筆跡に関して注目していました。
聖徳太子の書いた字の特徴は、横画の細長い線で、転折(右の角)が丸く膨らんでいるのが主な特徴でした。
中国の文化を意識し改革をしていたこともあって文字も中国の影響を受けて書いていると思うので、100%聖徳太子の字の特徴として観るのもどうかと思いますが、角が丸くなっている部分を見ると、包容力があり柔軟な性格だったということが言えます。
それと写経生のような職人型の字ではなく、途中途中で字の大きさに変化があるのも特徴で、チャレンジ意欲が強く、やはり、波乱万丈型の字でした。
聖徳太子の人間味も感じられ親しみが持てました。
聖徳太子の像の目の部分の中に、観音菩薩が入っていて、聖徳太子の人柄もまさに民を思い、菩薩様のような信頼のできる人柄だったと言われています。
だから、日本のお札に何度も登場するに相応しい人物ということのようです。